軍事転用可能な装置を不正輸出したとして外為法違反に問われた大川原化工機の社長らの起訴が取り消された冤罪事件で、同社の噴霧乾燥器の温度実験を巡り、警視庁公安部が実験データを一部除外して経済産業省に報告していた疑いがあることが判明した。伏せたデータ分は輸出規制品の基準に達しておらず、公安部にとって不利な証拠だった。
ある捜査関係者は取材に「都合が悪いデータが意図的に削除された」と公安部による隠蔽があったとする見解を示した。
同様な証拠隠しは警察だけの専売特許ではない。1967年に茨城県内で起きた強盗殺人事件「布川事件」を巡り、再審で無罪となった男性が国家賠償を求めた訴訟の判決で、検察の“証拠隠し”などが誤った裁判の結果を招き、冤罪を生んだ−。東京地裁が先日こう断じて、国と茨城県に約7600万円の賠償を命じた。
また、郵便料金不正・労働省元局長事件(村木事件)(2010年9月10日に大阪地方裁判所が無罪判決を言い渡したえん罪事件)においても、無罪判決の後、担当検察官が証拠を改ざんしていた事実が明らかになり、主任検察官であった大阪地方検察庁特別捜査部検事が証拠隠滅罪で、その上司である特別捜査部部長および副部長が犯人隠避罪で有罪判決を受け、処罰された。
現在の刑事訴訟法では、弁護士からの請求に応じ証拠を開示する義務が生じてはいるが、検察に不利な証拠が積極的に開示されることはなく、捜査当局の筋読みに沿った証拠が重視されている。
自白偏重と不利な証拠の黙殺はえん罪の源泉であり、日本の司法当局には効率性ではなく、もっと客観的で広い視野と人権重視の姿勢が必要である。
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