民主主義は一人一人が平等に一票の権利を持つということを構成員全体が認め合うことで初めて成立する制度であり決して普遍的なものではない。民主主義国家でも民主主義的原理の採用されていない組織は多い。
例えば資本主義を構成する基本的組織である企業は構成員である従業員、管理職、経営者が平等の権利を持っているわけではない。
政治の世界で民主主義が適用される暗黙の前提として国民はそれぞれ平等であるとの前提がある。フランス革命以前の世界では貴族と平民は明らかに異なり、平等の権利を持つとは考えられていなかった。平民も貴族も皆平等という思想を前提の下に民主主義が成立したのである。
しかし、現在の社会構造の変化は民主主義の基礎を揺るがせている。
異なる民族が一つの国家を形成する場合、そこでは民主主義では解決が困難な問題が発生する。民族間の対立のある問題を民主主義的手続きである多数決で決定しようとすると、常に少数民族が割を食うことになる。これが継続的に続くと少数民族は武力に訴えざるをえなくなる。
また、移民が増加し、一国の中に民族も宗教も異なり言葉も満足に通じない国民が多くなると、人間は平等であり、皆同じ権利を持つという建前に不満を抱くオリジナルの国民が増え、力づくの移民排斥運動がおこることになる。
民族的な対立がなかったとしても、国民の貧富の差が拡大すると民主主義の平等原理への疑問が増加する。多額の税金を納めている富裕者にとって、税金を納めないだけでなく、税金からほどこしを受けている貧乏人が自分と同じ権利を有するとは見做しにくい。
人間皆平等という建前を真っ向から否定することは難しいが、マスコミ等を通じて実質的に政治を貧民の手からとりあげ、自らに都合の良い政治をおしつけることになる。
アメリカほど貧富の差が拡大すれば、いずれ民主主義的な建前を捨て、皇帝が支配する帝国になっても何ら不思議はない。
民主主義が健全に成立するためには類似の価値観を有する中産階級が多数派を占めることが必要十分条件である。
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