日経新聞が賃金水準、世界に劣後 脱せるか「貧者のサイクル」 という記事を載せている。
過去20年間の時給をみると日本は9%減り、主要国で唯一マイナスになっている。国際比較が可能な17年と97年と比べると20年間で日本は9%下落した。主要国で唯一のマイナスだ。英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%も増えた。韓国は2.5倍。日本の平均年収は米国を3割も下回っている。
記事にもかかれているが、その原因は国際競争力の維持を理由に賃金を抑えてきたためである。デフレ不況と円高、過剰な設備と人――。1990年代後半から、製造業などは賃下げを含めた賃金抑制に動き、気がつけば日本の賃金は世界から大きく取り残された。
またその背景には生産性の低さも指摘されている。
日本経営者も政府も、不況下の中で輸出競争力を維持するには賃金水準の子直しが不可欠として低賃金政策をとってきた。そして低賃金による弊害が明確になった現在も多くの経営者が生産性が低いからこれ以上の賃上げは難しいと躊躇している。
ここには大きな勘違いがある。日本経済は韓国等と異なり輸出依存度が低いという事実である。日本経済は輸出に頼っていると漠然と考えている国民が多いが、日本経済の輸出依存度はむしろ低い。GDPで個人消費が56%を占めるのに対し輸出は14%にすぎない。
低賃金政策で輸出を伸ばそうとしたが輸出は伸びず、個人消費が低迷し経済が縮小したというのが低賃金政策の結果である。
生産性が低いのも日本の労働者の生産効率が悪いわけではない。日本の経営者が無能で付加価値の高い製品やサービスを提供できないから日本の生産性は低いのである。
賃金を抑えたにもかかわらず、世界市場の多くで日本企業は競争力を失った。日本のお家芸であった家電や半導体、液晶分野などは見る影もない。
これは賃金の問題とみるよりは経営者の無能に原因があるとみる方がはるかに合理的てある。日経新聞も書いているが、まず賃金を上げるのは一つの有効な方法である。その賃金水準で競争力がもてないような製品やサービスしか供給できないような企業はつぶれればいいのである。
いつまでも低付加価値の競争力の乏しい製品しか作れない企業を存続させる護送船団方式を続けていれば、日本経済は衰退するばかりである。
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