日本の経営者の中には、私は出る杭は伸ばす経営者だと自負している人が多い。一部の経営者はそれを公言し、失敗してもいいからどんどん積極的に行動してほしい、と新入社員に訓示をしている。
経営者は本気でそう思っているのだろうが、その為のシステムを社内に構築できていることはほとんどなく、実際にそう強弁する経営者のいる企業も他とそれほど大差はない。
大企業においては、社員の働きが直截社長の目に留まり、社長が直接評価することはありえない。
実際に社員を評価するのは上司であったり先輩である。彼等は大抵の場合自分の部下や後輩がスタンドプレーをするのを好まない。これは人間の本性である。
今迄の社風に無い新しいアプローチをしたり独自の行動をすればするほど周囲の人間には目立つためのスタンドプレーとしか思えない。成果を上げている時は黙認されても、少しでも失敗すれば必ず足を引っ張られることになり、社長の目に留まる地位に達するまでにいろいろ理由をつけて潰されてしまう。
社長の言葉を信じて行動しようとした新入社員の多くも上司や同僚に叩かれ、3年もたてば上司や先輩と同じ社風の染まることになる。
経営者が本当に出る杭のような社員を評価し活用したいと考えているなら、その方法は単にそのことを社員に表明したり訓示することではなく、出る杭のような社員が確実に評価されるような評価システムを構築しなければならない。
多くの人事評価システムは、主観的な評価内容を含んでいる為、気に入らない部下を低く評価することは難しくない。
出る杭のような社員を表舞台にたせる為には、その行為自体を客観的に評価できるようにすべきであるが、出る杭を好むと称する経営者が存在する大抵の企業の人事システムはそうなっていない為、出る杭を優遇するという社長の意欲は、何故我が社には出る杭のようなとびぬけた社員がいないのか、という愚痴に終わるだけである。
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