資本主義が勃興し発展するにつれ、封建的、専制的な政治体制は民主主義に置き換わっていった。この点をもって民主主義は独裁政治よりも経済の発展面では優位だという認識が長年世界の常識であった。
ソ連の共産党独裁体制がアメリカに敗れ崩壊したこともそれを立証したと考えられてきた。しかし、今中国の台頭によりその常識が揺らいでいる。
中国共産党はその独裁体制を維持し、政治的自由を求める言動や行動を厳しく断朝しながらも、その経済は急速な拡大を続けている。
その原因は人口の多さによる巨大な内需や、農村部から湧いてかる豊富な労働者だけではない。
新規アイデアを事業化したり、海外の有望な事業を模倣して事業を興す上においても中国は日本よりはるかに規制が少なく自由である。
これが相まって、中国は高い成長率を継続している。この点は旧ソ連において、経済面でも国家の統制が強すぎて新規の事業が生まれてこなかったのとは大きく異なる。
それでは中国に弱点はないのだろうか。過去においても多くの独裁政権が経済成長をリードしてきた。しかし、ある程度成功しても長続きしなかった。その原因の一つは官僚の腐敗である。
特定の企業と官僚が癒着し便宜を図ることで、非効率な企業が産業の主要部分を占めることで、経済全体を非効率化し停滞させると同時に産業界内部に致命的な対立を招くことになった。
もう一つは貧富の差の拡大である。一部の特権階級や成功者と一般庶民の間の貧富の差が拡大し、国民の不満が高まることで結果的に独裁政権は存続できなくなった。
現在中国においては、旧国有企業等は官僚との癒着が顕著だが、一方で経済自由化政策と巨大な内需を背景にアリババに代表されるような新興企業が急速に発展している。
これらの企業は政府の援助とは無関係に成長してきたため、官僚との癒着はそれほど顕著ではない。これらの中国経済をリードするまでに発展した新興企業群がこれまで通り経済の自由を享受できるか否かが中国経済の将来の発展を左右する。
また、中国社会で顕著になっている貧富の拡大も大きな問題である。今間までは貧富の差は拡大はしても、貧しい層でさえ以前より生活が改善していることを実感できていた。これからもこの実感を感じることができるか否かも中国の経済発展の行方を大きく左右する。
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