日本社会のかかえる大問題である少子高齢化や財政難を議論する時に、多くの論者がターゲットにするのが高齢者である。
いわく、若者等の現役世代と比較して高齢者は優遇されすぎている。もっと高齢者向けの予算を減らし、若者や現役世代に使うべきだ。
しかし、高齢者の投票率が高い為、高齢者に不利な政策がとれない。シルバー民主主義を何とかしなければならない等々である。
この論理が行きつくところまでいけば、働いていない年金生活者のような高齢者からは選挙権をはく奪すべきというような極論に至りかねない。
既に運転免許更新に関しては、70歳以上に対し一律に別の検査を課すというような年齢差別が何の疑問もなしに市民権を得ている年齢差別大国日本では、こんな暴論も実現しかねない。
しかし、そもそも高齢者は不当に優遇されているのだろうか、それ自体が官僚やマスコミが広めた思い込みにすぎない。
年金について言えば、大卒後22歳で就職し定年まで勤めたとしても、65歳から得られる年金は200万円前後である。20年以上前のピーク時と比較すれば100万円程度減少している。
ここから30万円程度の介護保険、国民健康保険、税金が6万円程度とられ、手取りは160万円前後、月額14万円以下である。
これでは持家のある者でも貯蓄の取り崩しなしには生活は困難であり、別に高齢者が優遇されているとは言えない。
仮に、これをさらに改悪すればどうなるか。3000万人を超える高齢者の大部分が75歳前後で貯蓄がなくなり破産することになる。これが生活保護に流れれば財政難はより深刻になる。
生活保護からも排除し放置すれば、日本のあちこちで高齢者の餓死が発生し、一方で追い詰められた高齢者による犯罪が多発する。社会不安が増加し治安費用や刑務所費用が大幅に増加することになる。
また、元々年金制度が整備される前の日本では、朝ドラでも見るように親の生活費は子供の仕送りによって賄われてきた。年金制度が親の生活を支える機能を撃失えば、子供世代は意思に関係なく国家によって強制的に仕送りを義務付けられることにならざるをえない。
このように、少子高齢化から発生する様々な問題は、高齢者を悪者にし年金制度を改悪しても解消せず、別のより深刻な問題につながるだけである。
問題は、高齢者が優遇されているから発生しているのではなく、政府の失策により少子化を放置したことにある。だから対策は、一つは現在の高齢化問題を緩和すること、二つは根本的な少子化の解消策を早急に実施することしかない。
高齢者優遇やシルバー民主主義などを強調し世代間の対立を煽っても何の役にもたたない。
一つ目の対策としては、高齢者が働ける体力があるうちは気持ちよく働ける環境を整えることで、65歳を境に扶助する者と扶助される者になるのではなく、若者と働ける高齢者が働けない高齢者を支える体制を整備することである。
その意味で即刻廃止されるべきは定年制である。
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