日銀が必死に金融緩和を続けても一向に物価が上がらない。庶民の生活に無知な官僚や学者の中には不思議に思っているようだが、何の不思議もない。
年金生活者の可処分所得が大幅に減少しているからである。
年金受給額が最も高かったのは平成11年度であるが、この年度と今年を比較すると、可処分所得の減少は目を覆うばかりである。
平成11年度に新規に年金を受給する新規裁定者の男性の平均年金月額は196,818円であった。これに対し今年の男性新規裁定者の平均年金月額は156,336円まで減少している。(受給者の平均月額では平成11年177,046円 平成27年145,305円)
(平成11年度数値は厚生年金保険・国民年金事業の概況から、今年の分は、 みずほ総研2017年2月1日2017年度の年金改定率から)
次に可処分所得を見てみよう。
平成11年に月額196818円(年236万円)を受給した男性の可処分所得は月17.7万円である。
((所得は当時の年金控除140万円を差し引いた96万円となる。控除される金額は所得税2.9万円、住民税6.8万円、国民健康保険が13.5万円(税率や健康保険は平成11年の正確な数値が見つけられなかった為平成29年の率で計算、国民健康保険は当時はなかった介護部分は除く)、となり可処分所得は212.8万となり、月の生活費は17.7万円になる。))
平成29年に156,336円(年188万円)を受給した男性の可処分所得は月わずか13.7万円であり、これでは絶対に年金だけでの生活は不可能である。
((現在の所得は現在の年金控除120万円を差し引いた68万円となる。控除される金額は所得税1.5万円、住民税4万円、国民健康保険が8.8万円、介護保険8.9万円(大阪市)となり可処分所得は164.8万円となり、月の生活費はわずか13.7万円しかない。))
また、平成11年当時年236万円受け取っていた人の可処分所得は現在はどうなっているかというと(年金減額は考慮しない)、月16.6万円となり、1.1万円も減少していることになる。
((年金控除が120万円に減った為所得は116万円となる。控除される金額は所得税3.9万円、住民税8.8万円、国民健康保険が15.3万円、介護保険8.9万円に増加し可処分所得は199.1万円となり月の生活費は16.6万円となる。))
年金受給者の人数は平成11年当時の17百万人から今年の33百万人まで増加しており、これが年金財政悪化の大きな原因ではある。
しかし、33百万人にも拡大した年金生活者が個人消費に及ぼす影響は格段に大きくなっている。
年金生活者は可処分所得を大幅に減らし生活苦にあえいでおり、これを財政危機だからとさらに改悪するとすれば、日本という国に未来など存在しないことは明白である。
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