ピクティの21世紀の資本が注目を集めている。賛同
する意見がある一方で、富の集中や格差問題の解決
策としての累進課税に非難が集中している。
批判内容は多岐に及ぶが、最も大きな指摘は以下の
二つであるように思う。
1.不平等で何が問題なのか
2.累進課税は結果的にリスク・テイキングを抑制し
経済成長率を低下させることになる。
不平等の問題の本質は貧困層の増加にある。国民
の大部分が定職を持ち、住居と日常生活を維持し、
子供に必要な教育を与えることのできるような中流生
活を維持できているのなら、一部の大金持ちが存在し
ても何ら問題はない。
しかし、アメリカやEU、さらに日本でも中流層は解体さ
れ、日々の生活にも事欠く貧困層に転落する者が増加
しつつある。
学校を出ても職が無い、職があっても非正規の職にしか
つけず、働いても食べるだけで結婚もできない。
結婚でき子供ができても十分な教育を受けさせることが
できず、子供もまた親と同じ貧困な人生をおくる。
このような貧困層の再生産と固定化、これこそが問題
である。
そもそも民主主義は生まれながらの人間の平等を理想
かつ前提として成立する制度である。生まれながらに大
きな格差があり、その格差が一生埋まらないことが常態
化すれば民主主義の前提が崩れてしまう。
また、絶望した貧困層の増加は社会の不安定要因であり、
大量の貧困層が存在する社会では治安の悪化は避けら
れない。
中流層の多い安定した社会と、貧困層の多い不安定な
社会のどちらが住みやすいかといえば、答えは明らか
である。
一方で、2番目の批判もまた真実である。以前の日本の
ように収入の90%近くを税金にとられるようでは、リスク
をとってまで収入を増やそうとは思わない。
しかし、貧困層の増加と定着化は民主主義社会そのもの
を破壊しかねないほど危険なリスク要因であり、貧困層
の生活向上は最優先事項である。
若者や貧困層に対し安定した生活できる収入を得られ
る職を提供することが第一義的な政策であるが、それ
と並行して極端にならない累進課税を採用しその財源
で貧困層の貧困脱出を支援する政策を充実することが
不可欠である。
安定した平和な社会が国民の幸福の大前提であるこ
とは否定できない事実である。
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