揺れている。
表面的にはユーロ危機に代表されるような通貨危機や財政
問題が報道されるが、社会としてのヨーロッパの変質がその
裏にある。
人類の平等や博愛主義といった理想の実現をめざし、最も
その理想に近づいたはずのヨーロッパ社会は今や南北で
いがみ合い、移民の排斥運動が各地でおきている。
平等と博愛主義は影を潜め、人種差別と排他主義が幅を
利かせはじめている。
その原因を見つけるのは簡単である。ヨーロッパの中産階
級の没落である。
理想主義というものは自らの生活が安定し余裕があって初
めて発動する。
自らの地位が脅かされ、いつ没落するかわからない恐怖に
見舞われている時には、理想主義が居つく隙間は心の中に
はない。
ヨーロッパの博愛主義は古き良き時代。ヨーロッパ社会が安
定して栄え、国家指導による修正資本主義の下で労働者と
しての国民の地位が安定し、中流階級として不安の無い安
定した生活が保証されてた時代の遺物である。
今やグローバル資本主義全盛時代の中で、企業は国家の
掣肘を離れ、企業の都合の良い国に事業所を作り、不利に
なればそれを閉鎖し自由に解雇する。
その結果、ヨーロッパでは労働者は賃金の安いアジアや東
欧の国々の労働者と直接競争にさらされるようになり、失業
の増加と賃金の低下が中産階級の生活を脅かすようになった。
かっては余裕をもって見ることのできた低賃金の移民労
働者は今や目障りなライバルになり、ギリシャやキプロス等
の南の怠け者どもに貴重な税金を使うことも、もはや我慢で
きなくなったのである。
人類の平等や博愛という理想主義は生活の安定した中産
階級が多くを占める社会でのみ多数派となりうる。中産階級
が没落していく社会では、そのような理想主義は切実な本音
の前では影響力をもちえない。
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