高齢者が過去の特例措置で高い公的年金を受け取ってい
る「もらいすぎ年金」が、2015年4月に解消される見通しに
なった。民主、自民の両党は、本来より2.5%高い年金の
水準を13年10月分から15年4月分にかけて段階的に引き
下げることで合意した。減額を盛り込んだ国民年金法改正
案を今国会で成立させる運びだ。と日経新聞が書いている。
一見当然のように思えるがトンデモナイ話である。
まず「もらいすぎ」ということが事実に反している。
平成12年から14年の間、本来であれば物価下落に対応し、
引き下げるべき年金額を下げていなかった分をもって「もら
いすぎ」と表現しているらしいが、それは事実に反する。
そもそも年金の物価スライドは昭和48年に導入されている
が、その趣旨は物価上昇に対応し年金の実質的価値を維
持するためのものであった。
さらに平成元年に完全物価スライド制が導入されたが、その
趣旨も物価上昇にもかかわらず、年金が改定されず実質的
価値が減価するのを防ぐためのものであり、物価下落時に年
金支給額を減らすことを目的としたものではなかった。
その証拠に、平成元年版厚生白書には以下のように記され
ている
3 年金制度改正の概要
(1) 厚生年金,国民年金の改正(国民年金法等の一部を改
正する法律)
ア 給付改善
2) 完全自動物価スライド制の導入
物価上昇にあわせて年金額が必ず改定される仕組みを導入した。
実際に初めて物価下落が生じた時に物価スライドで年金額
引下げができなかったのは、物価スライドが本来の趣旨とし
ては年金引下げを想定していなかったからである。
つまり、厚生官僚は国民への説明としては物価上昇時にす
ばやく年金額を改定できるようにするため、といって法律を
通過させ、その裏で将来の年金額引下げの芽をひそませた
のである。
だから当時は、年金額を引下げないことが当然の判断だっ
たのであり、「もらいすぎ」など称し今更減額すること自体と
んでもない詐欺行為である。
また、現在の年金制度にはマクロ経済スライドという制度が
導入され、物価が上昇しても年金額は上がらないように改悪
されており、物価下落時には減額されるが、物価上昇しても
増額されないという、イビツな制度になっている。
年金財源が不足するからといって、ルールを無視して改悪を
続けるから政府も年金制度も信頼されないのである。
また、物価スライドの前提となる消費者物価もあてにはならな
い。下落のかなりの部分は電化製品の下落が占めており、年
金生活者の消費実態とは乖離があり、基準としては適切なも
のではない。
物価スライドの基準からは少なくとも日常品でない電化製品等
の耐久消費財は除外すべきである。
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