業に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が29日、参院本
会議で可決、成立した。来年4月から厚生年金の支給開始
年齢が段階的に引き上げられることに伴う措置で、年金給
付が始まるまでの無収入を防ぐのが狙いだ。
狙いは間違っていないが、この制度には誰が考えても解る
致命的な問題点がある。
歴史的な円高を背景に設備投資の軸足が海外に移り、デ
フレ経済下で国内需要の増加も期待できず、人員ニーズは
製造現場も管理部門も先細りになっている。
また、企業業績も低迷しており、余分な人員を抱える余力は
ない。
仕事も人件費もないのに、どう雇用を維持すればいいのか、
というのが、多くの企業の本音である。経団連が会員企業な
どを対象に昨年行った調査では、雇用延長が義務化された
場合、5割が再雇用した社員の給与水準を引き下げ、4割が
若年層の採用抑制を実施すると回答した。
当然、若者の雇用が減少し、現役社員の賃金引下げが行わ
れることになる。
これは日本経済にとっても日本社会にとっても大きなマイナ
スである。
60歳から65歳の間を無収入で過ごせるだけの資産を現役時
代に蓄えることは困難であり、この間の糧を得る方法を支援
することは不可欠である。しかし、今回のような義務づけで
は却って弊害が大きい。
むしろ、60歳以降については社会人としての間に蓄積した
ノウハウで自営業者として自立するのを支援するシステム
を確立すべきである。
例えば、サラリーマンで各種専門資格にチャレンジしそれを
取得している者は多い。しかし、それで脱サラし自立出来る
者は少ない。
それは、新人を支援し育てる仕組みが無いからである。官
公庁は実績のあるベテランを利用したがり、新人にチャンス
を与えない。
これを例えば定年後資格を活かして自立しようとする者に対
し、最低2年間は優先的に仕事をあっせんするような仕組み
を整えれば、士業で自立できる60代もかなり多くなる。
いずれにせよ企業に雇用を義務づけるよりは、自営業者とし
て自立できる環境を整備する方が余程日本にとっては有益
である。
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