内閣府が2024年8月に公表した経済財政白書は、高齢者が蓄えた老後資金は85歳を過ぎても平均15%程度しか取り崩されていないという現状をリポートした。日本経済の活性化には、高齢者が無駄にお金をため込まず、消費や投資に回すことが必要という指摘である。
しかし、この指摘は二つの大事なことを無視しており、高齢者の納得を得ることは難しい。ひとつは高齢者の格差が広がり少なからぬ高齢者が貧困化しており、平均金融資産残高が2462万円と高い水準にあるのは一部のお金持ちに引っ張られているにすぎない。実際のところは中央値では1604万円となり平均値よりだいぶ少ないが、一番多いのは100万円未満の27.4%、次に多いのが100万円から500万円未満の21.3%で5割近い高齢者は余裕などないことがわかる。
もう一つは多くの高齢者は老後不安を拭えないということである。3000万円を超える金融資産をもっている層でも老後が怖くて無駄なお金は使えないと考えている。それは政府の政策にある。
政府は高齢者の増加で年々社会保障費が増加することを理由に、マクロ経済スライド等年金削減策を推進し、医療費や介護負担の増加、健康保険料や介護保険料の増加と年々国民負担の増加を図っている。これでは安心できる老後など想像できない。
さらに一部のバカな識者やマスコミ、評論家を利用して、高齢者への社会保障費は削減すべきだとのプロパガンダを継続している。
これでは金融資産1億円以下程度の多少裕福な高齢者層でも将来不安にかられ金融資産を取り崩して消費にあてようとは思えない。
一方、政府が実施しているのは生前贈与の優遇や孫世代への教育費支援の優遇策など高齢者から次の世代に資金を移す政策である。これらは高齢者がお金を使わないのは次世代に財産を残すためだという考えに基づくものであり、税制優遇するから今の内に早く次世代にお金を移しやすくすることでお金を有効活用できるようにするというものである。しかし、裕福な高齢者でもお金を使わないのは老後不安があるからであり、こんなピントはずれの政策が効果を発揮することはない。
政府がすべきことは、財政が逼迫しているということをアピールするのではなく、どんなことがあっても日本の国に貢献してきた高齢者の生活は守るという姿勢を徹底してアピールして高齢者を安心させることである。
老後の将来不安がなければ、何千万も金を眠らせておく必要はなく、日々の欲しいものしたいことに使うことができる。今の高齢者は高度成長期やバブルを経験している世代であり、将来不安さえなければ金の使い道はいくらでもある。
政府財務省は財政危機を喧伝し高齢者の債務の紐を締めさせるのではなく、老後の安心感を醸成すべきである。その結果社会保障負担が増えたとしてもそれ以上の経済効果を得ることができる。
posted by ドクター国松 at 10:15
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