黒田前日銀総裁の異次元緩和政策については、物価目標を達成できなかったこと、日銀の財務バランスを悪化させたこと、円安と物価上昇を招いたこと等を理由に批判する意見が多く見られる。
しかし、黒田就任以前と現在のGDPを比較すれば明らかだが、黒田前日銀総裁の異次元緩和は日本経済の回復に大いに貢献したことは誰にも否定できない。
円安が進み、物価上昇が進んだことは否定できないが、円安が進んだ時期を見ればわかるように、弊害が顕在化するかもしれない1ドル140円台を突破したのも、物価上昇が顕在化したのも最近の話であり、黒田氏の在任期間の大部分においては弊害は顕在化しなかった。
アメリカの金利上昇も今年で打ち止めとなる見込みであり、円安圧力も物価上昇圧力も今よりは弱くなると見込まれ、無理に金利を上げる必要性は少なくなっている。
日銀が大量に保有する国債の処理をどうするか、等の問題は残るが23年3月時点で国債の含み損1571億円に対しETFの含み益は16兆356億円に達している。
金利上昇局面での国際含み損拡大リスクを強調し、異次元の金融緩和を批判する意見は多いが、金利上昇局面においても国債とETFをセットにした相対取引等を利用すれば、日銀財務に大きな悪影響を与えず正常化することは可能である。
これらを勘案すれば、低迷していた日本経済を市場最大の税収を上げられるまでに引き上げた黒田前日銀総裁の異次元の金融緩和は大成功として評価されるべきである。