ここにきて黒田日銀総裁の異次元の金融緩和に対する風当たりが強くなっている。民間の経営者や有識者らでつくる「令和国民会議」が金融緩和に基づく物価安定目標に異議を唱え、安倍政権とは異なる方向を目指す岸田政権も金融政策の転換をもくろんでいる。金融緩和の副作用がここにきて拡大していると見られているからである。
その一例とされているのが円安の進行である。米欧の中央銀行が急ピッチで利上げを進めている。これに対し、黒田・日銀はあくまで金融緩和にこだわったため、日本と海外の金利差が拡大。為替市場では低金利の円を売る動きが加速したことである。
もう一つは物価上昇である。ウクライナ戦争による燃料価格の上昇や、ロシア制裁による各種資材の上昇、コロナ後の需要拡大に加え歴史的な円安は輸入コストの増加を通じて国内物価を押し上げ、22年12月の消費者物価指数は前年同月比で4・0%上昇した。上昇率は消費増税時を上回り、41年ぶりとなる高水準に達した。
この状況で経済政策の常識に反し金融緩和を続けることへの批判が高まっているのである。
しかし、それでは金融緩和を止めることが正しいのだろうか。円安といっても一時の150円から現在は130円に戻っている。企業決算等から見ると130円台という為替相場は決して悪いものではない。もし金融緩和を止めれば為替は100円から110円台への上昇が見込まれ、企業決算にとっては大きな打撃となる。海外のヘッジファンド等の動きによっては100円を切ることになり円高不況に陥る危険性が高い。
また、現在の物価高はコストプッシュ型の物価上昇であり金利を上げたからといって収まるものではない。
海外のヘッジファンドが金利上昇、国債安、円高を狙っており、日本政府がそれを助長するような政策をとることは日本経済にとって非常に危険である。