事態がある程度ハッキリしてくるにつれ、外務省の無能さが際立ってきた。
9月7日に発生した衝突事件で逮捕を強く主張したのは当時の外務大臣であった
岡田氏である。氏は原理主義者として知られ、法律違反があれば逮捕するのは
当然として、逮捕を主張した。
その時、外務官僚は適切なアドバイスを行ったのだろうか。
尖閣列島は日本の領土であるが、従来日本は尖閣列島を領土として全面的に主権を
行使していたわけではない。その証拠に日本人は尖閣諸島に上陸できず、漁業も実
質的に禁じられ、資源開発もできていない。
この問題は日中国交回復時においても明確に主張されておらず、日本と中国は共に
自国領主張し(日本が実行支配)ながら、トウ小平が1980年代に打ち出した「尖閣
問題について論争を棚上げし、共同で開発する」という方針に準拠してきた。
尖閣は自国領であることを前提に法律を適用し処分するということは、この方針を
180度変更するものである。
であれば、中国の出方を想定し、それに対する日本の対処戦略を綿密にたてる必要
があるが、結果からみれば何も準備されていなかった。分析が甘過ぎたのである。
さらに、マスコミ等で丹羽大使が深夜に中国側に何度も呼び出されたという報道が
流れ、国民の反中国感情を刺激したが、これも事実ではなかった。単に日本側の
時間の都合で深夜になっただけであった。
このような間違った報道がされた場合には、素早く訂正をだすべきである。いたずらに
感情的な反発を助長することは、問題解決を難しくする。
前原大臣が「国内法に基づき粛々と対応する。」と言い続けたことも、従来の枠組み
を変更したことを中国側に印象付け、強硬な対応を招いた原因である。
中国の強硬策を予想し、それにたいする対応策を持っていたのならよいが、アタフタ
として、検察に責任を押し付け処分保留で釈放する、というような世界に日本のハジを
さらすような対応しかできなかったのであれば、もっと政治的判断をきかせて早期に解決
すべきであった。
今回の日本の無様な対応が、ロシアに足元を見られた要因であることは間違いない。


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